ページ

2011/11/03

きょうは「文化」の日

きょうはなぜ「文化」の日?



今日は文化の日。そもそも明治天皇の誕生日で、新憲法公布の日だ。明治天皇や新憲法って、文化なのか。科学分野でも文化の日であるらしい。「何でもありの、あいまいな『文化の日』を捜査してほしい」。隊長の厳命で取材を始めた。
 文化の日は、48年の「祝日法」制定時から続く祝日。11月3日は明治天皇の誕生日で、戦前は明治節だった。どんな経緯で明治節が文化の日に生まれ変わったのか。衆議院・内閣調査室を訪ねた。
 衆参両院では、その名も「文化委員会」で法制定の議論がなされたという。この休日を、46年11月3日に公布された新憲法で祝うべきか、もともとの明治天皇や明治時代で記念すべきか、議員の意見も割れた。
 参院側は11月3日は「憲法記念日」とする考えだったが、衆院側が「憲法記念日は施行の5月3日」と主張。結局、参院側も同調し、文化の日とする方向で決した。えっ? 11月3日は「文化」とどう関連するの。
 山本勇造・参院文化委員長(作家の山本有三)は当時、11月3日をこう理由づけた。戦争放棄を盛り込んだ新憲法公布の日で忘れがたく、「『自由と平和を愛し、文化をすすめる』、そういう『文化の日』ということに我々は決めた」。やや強引。自由や平和の日でもよかったのに。でも、この理由が今も国の説明に引き継がれている。
    ◇
 文化の日は、全国で様々な文化関連の催しが開かれる。皇居では、文化勲章の親授式。受章者は、主に文化功労者の中の「文化ノ発達ニ関シ勲績卓絶ナル者」(文化勲章令)のおおむね5人。識者10人からなる文化功労者選考分科会の意見を文部科学相が聞き、首相に推薦する。
 37年の1回目は、4月授与だった。文化の日に贈るようになったのは戦後から。よく考えると、文化の勲章なのに、第1回から日本画家の横山大観ら文化人と並び、本多光太郎や長岡半太郎ら世界的に著名な科学者がいた。科学って文化?
待てよ。ギリシャ、ローマの昔から、西洋で優れた文化人は優れた科学者でもあった。武蔵野美術大学の柏木博教授(近代デザイン史)は、レオナルド・ダビンチなどの名前を挙げ、「欧州で科学と芸術は融合していた。彼らにとってはすべてアートでした」。確かに、英語の「Art」には芸術・美術、技術の意味が含まれる。
 昭和初期の受章者は、明治に学問を身につけた世代。「お雇い外国人」の影響を受けていた。当時、芸術、科学を「文化」に包括する西洋的な理解が、選ぶ側、贈られる側の共通の了解だったのかもしれない。
    ◇
 実は文化の日、もう一つある。「関西文化の日」。毎年11月の第3土曜と日曜が基本だが、今年は14、15日。両日を中心に、関西2府8県内の美術館や博物館など402施設の入館料が、主に常設展で無料になる。
 03年、当時の河合隼雄文化庁長官が呼びかけた「関西元気文化圏構想」の一環としてスタート。4年前の参加234施設、来館者計22万6千人から、昨年は357施設、計31万7千人に増加。もうひとつの「文化の日」もがんばっている。
 今年、政権交代で日本の文化政策も転換期を迎えた。鳩山政権は前政権が決めた「国立メディア芸術総合センター(仮称)」は「国営マンガ喫茶」で税金の無駄遣いの象徴だとして、建設中止を決定。首相の所信表明で文化政策への具体的言及はほとんどなかったといっていい。
 東京大学の小林真理准教授(文化政策)は「民主党の文化政策は、まだ分からない。伝統文化の保存や振興も大切だが、メディア芸術のような新しい試みをする人たちを支援することも、同じように重要だ」と指摘する。
 衆院側の文化委員会委員、受田新吉は、著書『国民の祝日と余暇』(75年)に「文化の日一日をすごすだけで文化が進むわけではない。一年中のあらゆる日が文化を進める一日であり、その結晶点ともなるべきものが、文化の日である」と記した。
 『日本文化論の系譜』の著者、大久保喬樹・東京女子大教授(比較文化)は「日本人くらい文化についてあれこれ考えるのが好きな国民はない」と言う。
 長い戦争が終わり、自由と平和が訪れた当時、日本の人々は文化を発展させようと、やや強引だが11月3日を選んでいたのだ。「隊長! 一年中は無理としても今日は美術館や科学館に行き、自由と平和のありがたさを再確認しましょう!」
=============================
以上は、asahi.com(朝日新聞社)2009.11.3 を、全文、転載。



朝日新聞さんらしい、と言えば朝日新聞さんらしい構成、纏めだと感心いたしました。と、言って
今日は美術館や科学館に行き、自由と平和のありがたさを再確認しましょう!」の気分になることは出来ませんが(笑)



0 件のコメント:

コメントを投稿

ご訪問ありがとうです。
感想などいただけたらうれしいです。